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高千穂の夜神楽 ミニ解説 リーフレット紹介ページ


以下の、高千穂町発行の「高千穂の夜神楽 ミニ解説」リーフレットは、高千穂町内の観光案内所で入手したものです。
高千穂の夜神楽を見学する際、大変参考になろうかと思われます。

掲載内容は、先々変更になる場合があります。
最新情報は、公式サイト等で再度ご確認をお願いします。

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高千穂の夜神楽 ミニ解説 高千穂の夜神楽 ミニ解説

高千穂の夜神楽 ミニ解説 高千穂の夜神楽 ミニ解説

高千穂の夜神楽 三十三番 ミニ解説 高千穂の夜神楽 三十三番 ミニ解説


高千穂の夜神楽ミニ解説

◎高山を通りて行けば面白し
 いつも絶えせぬ御神楽の音


 秋の収穫も終わり、祖母山頂が樹氷で覆われ始める頃、神話と伝説のまち高千穂では、氏神様のお祭りが始まります。高千穂の村祭りは収穫感謝祭としての秋祭り、太陽復活・鎮魂儀礼としての冬祭り、五穀豊穣祈念余祝の春祭りとして、氏神様を神楽宿と呼ばれる里の家にお招きし、夜を徹して33番の神楽を奉納するのが昔からのシキタリです。ただ、近年は舞人や村役目の都合で夜神楽が奉納出来ない集落もあり、そうした集落は日神楽と称して、お昼に式三番と呼ばれる神楽を中心に数番奉納しています。

◎祭場のしつらえ
 例祭日の当日、お昼過ぎに氏神社で神迎えの神事が行われた後、お神輿の行列が村中をねり、神楽宿へと向かいます。村道には神の道として道注連(みちじめ)が張られ、道行神楽が行われます。
 祭場の神楽宿には、その象徴として屋根に弓矢と山冠・立冠・横冠の3本の御幣が棟飾りとして設けられ、竹の器に神酒を注いだ「かけぐり」を供えます。
 庭には「山」と呼ばれる一問四方の外注連が設けられ、神楽が舞われる神楽宿の中央の部屋(おもて)には二間四方の内注連「神庭」がつくられます。「山」は山の神で、自然の象徴として33天や28宿、24神、12ケ月12神等の御幣が配され、棚板の籾俵に山神の依代「穂の弊」三本を安置します。
 神々は天に近い「山」に降臨して、注連を伝わり「神庭」に舞降りるという古来の神事形態の中で神楽は奉納されます。
 内注連の「神庭」は神前を東と定め、太鼓の座が南、外注連の方が西で「幣の上」と称します。東の神座には天照皇大神宮の「筥宮」を中心に神面(おもて様)を置き、神酒や米・野菜・餅等の神饉が供えられます。
 二間四方の四隅には竹と榊を立て、注連縄と「彫り物」が飾られ、天井の中央には高天原を象徴する「雲(天蓋)」が吊られます。「彫り物」は中央の鳥居、子授安産豊穣の「湯襷」、自然界の中央の土徳神、四方の木・火・金・水徳神、十干十二支等の切り絵が配され、神仏習合の陰陽五行の影響がみられます。
 高千穂の注連縄は七五三で編まれ、天神七代・地神五代・日向三代を意味しています。祭場そのものに自然界の神々と里人の生活との絆が表現され、その結界の中で1年に一度、山間で生きる高千穂の里人は神々と神遊びを行うのです。

◎夜神楽33番
 神楽の舞手は祝子者・奉仕者という意味から「ほしゃどん」と呼ばれます。33番は、観音様は33の仮身により人々を救うという天の思想によるものといわれます。神面は「おもて様」と称され、神そのものです。
 神面の起こりは人にあらざる神の表現といわれますが、33番の中では岩戸5番をはじめ、杉登の入鬼神(いりきじん)、地割、山森、五穀、七由頁神、八鉢(やつぱち)、御神体、御柴(おんしば)等の舞で「おもて様」を拝した神楽が舞われます。「面神楽」は神話にちなんだ劇的な舞で、「面様」をつけない舞は「素面(すおもて)舞」といわれ、清祓い・鎮魂・豊穣祈願・子授安産等の願神楽として奉納されます。
 神楽歌はそれぞれの舞に応じた歌や舞の進行、所作の区切りとして歌われます。「四方念じて」「吹けば行く」「中央六部に」は四方や中央、太鼓割りに移る時の歌で、一つの採物手が終わると「舞いおろす中のや正面」が歌われ、「八雲立つ出雲八重垣」(地区によっては「納めても千代の御神楽」)で舞は終了します。
 高千穂の神楽は「採物(とりもの)神楽」ともいわれ、何を持って舞うかで、その神楽の願いと意味が表わされています。鈴の音は神の「のりごと」であり、榊・御幣は神の依代(よりしろ)、杖は荒神様の持物で、神威であり、また耕作棒・測地の尺棒・山人の贈物として使われます。
 弓矢は悪魔祓いの採物で、太刀は水徳神の呪物として使われます。「地固」「岩潜」等は太刀を用いる水神系の神楽ですが、併せて女性の帯を襷に用いることから子授安産の祈願も含まれています。
 扇は神儀儀礼の呪具で、扇の手は初めは閉めたままで舞う畳扇(閉扇)、次に開いて舞う「開扇」の手に移ります。これは力の展開を意味するといわれます。

◎旅人もー夜氏子
 観光で見学に来られたお客様も一夜の氏子です。村祭りは総指揮の「元締め」を中心に「中世話」「神使われ」「注連の番」「台所役」等、里人の祭役目で運営されます。
 どうか村々のシキタリをお守りいただき神々・里人とともに神遊びをお楽しみください!


高千穂の夜神楽の歴史

 神楽は古くは「神遊び」といい、天照大神の天岩戸の故事に起因する舞楽で、神祭の時に奏し、平安時代の中頃に様式が完成されたといわれています。 高千穂の神楽の歴史については、高千穂神社所蔵の1189年(文治5)「(旭大神)十社大明神記」文書に「七日七夜の御じんらく」とあり、室町時代の文書には桑野内・菊宮神社での神楽奉納が記されています。また室町期作の荒神面も町内に数体有り、すでに鎌倉・室町時代に舞われていたことが分かります。
 1691年(元禄4)高千穂庄神社記録には殆どの氏神社で「神楽有」と記され、1754年(宝暦5)五ケ所村庄屋矢津田文書に夜神楽の記述があり、1846年(弘化3)十社宮司田尻則満日記に「10月21日晴天、野方野の石神の面彩色に付き、遷宮並びに祭礼相勤め、神楽宿は伝次方、其夜は同村新助方泊り。」と記されています。このことから、江戸中期には夜神楽が奉納され、後期には民家を神楽宿とした、現在の高千穂の里神楽が成立していたことが分かります。


高千穂の夜神楽の系統

三田井系神楽
 当ミニガイドに記された高千穂神社鎮座地に伝えられている三田井地区、上下押方、向山椎屋谷、丸小野、秋元神楽。

岩戸系神楽
 岩戸地区の神楽。「彦舞・注連口」がなく、他地区にない「蛇切り・四人鎮守」が番付されている。「蛇切り」の次に舞われる「八鉢」は、素戔嗚尊結婚喜びの舞として、舞の後半で木造陽形の採物を手にして舞う。「日の前」は「火の前(火伏神楽)」。地固・弓正護の宝渡しはない。永の内神楽では「沖逢」で舞手が手を浄め、炭火を握り渡す儀式がある。

上野・田原系神楽
 押方五ケ村、上野、下野、田原、河内、五ケ所地区の神楽。五行の彫り物「水」は四方ではなく、天蓋の「雲」に配する。杉登入鬼神では素面の舞辛が荒神の背後で鈴を鳴らす尻付きがあり、幣神添では道化荒神が参入する。地固では宝渡しの前に太鼓・太刀神事が入る。大神では神職・神楽役・舞手による五方三度の拝礼がある。「日の前」は「火の前(火伏神楽)」。田原神楽は杵舞が入る。河内、五ケ所神楽は肥後・豊後系神楽の影響を受けている。

押方二上・芝原神楽
 五ヶ瀬桑の内神楽と同系統。三田井系に属するが「彫り物」は干支の切り絵を配し、天蓋の雲に五行を飾る。「目の前」では火伏神楽として顔に木炭を塗る。杵舞があり、外注連の前縁に置かれた火鉢の灰を杵で観客に蒔き、灰を被った人は無病息災の御利益とする。

向山黒仁田・尾狩神楽
 諸塚・日之影岩井川系の神楽で、鍬入れ・午の鋤入れ・早乙女・杵舞・箕舞で構成された「田植神楽」や、東西、五天皇、座張りなど他の地区にない番付がある。岩戸神楽では舞開きがなく、幼児が天照大神に扮して登場する「ひよこ舞」が入る。


高千穂の夜神楽 三十三番 ミニ解説

神楽番付及び舞は、三田井地区の神楽を基本としている。

1.彦舞(ひこまい)
 神庭を祓い清める序曲舞。島と呼ばれる斗桝(とます)の周りを三廻りして、桝の上にのり太玉串(ふとだまぐし)に鈴を持ち添えて四方を拝し祓う。島は村・土地の象徴、物を廻る所作は神の霊力や呪力への期待。

2、太殿(たいどの)
 神庭を高天原・神殿と定め、神の降臨を期待する神楽。東西南北に注連を引き、五色の幣帛(みてぐら)を飾り、天孫降臨御供奉の三十二神、天神地神八百万の神、当初の氏神勧請し奉る。所願成就の御注連とは拝み奉り給うものなりやと唱う。

3、神降ろし(かみおろし)
 神庭を祓い清めて諸々の神を招じる舞。
厄除けの午王(ごおう)、天空の中心を司さどる北極星の神・妙見神(水神)を召し降ろす歌が入る。以下三番を式三番という。

4、鎮守(ちんじゅ)
 神庭を浄め、神々の鎮まりを願い、村の守護を祈願する舞。踏み鎮めの反閇(へいばい)と袖を巻きながら膝を折って舞う「折敷(おりしき)」の所作舞いが特徴。

5、杉登(すぎのぼり)
 御神木の杉を伝わって降臨された氏神が、村人と祝福の神遊びを行い、再び昇神される舞。入鬼神は氏神面として祭祀される特別の面を用いる。入鬼神の前後に素面の二人舞がある。

6、地固め(ぢがため)
 耕地を讃え、水徳剣としての太刀の呪力により耕地を護る、国土安泰祈願の神楽。舞が終わると、村の護符、神物として太刀に象徴される水徳を授ける宝渡しの儀式がある。

7、幣神添(ひかんぜ)
 神の依代である御幣の威徳を讃える舞といわれ、「かんぜ」の意味は、神懸りと解されている。御幣を振る所作舞が入る。

8、住吉(すみよし)
 稲荷神楽ともいわれる。住吉神は和歌の神で、住吉の岸打つ波の重ければ 松は根ごとにあらわれる等、独特の歌舞がはいる。

9、太刀神添(たちかんぜ)
 太刀の威徳を礼讃し、災厄を祓う舞。
「トロムコトントン・トロムコトン」の太鼓のリズムで、左前右前と二拍子の摺り足で舞う所作が「太刀の手」の特色。

10、八鉢(やつばち)
八揆ともいい、太鼓での曲打ち舞が特徴。地霊としての太鼓舞は豊穣の祈りとも解されている。舞姿は生産者である農民を表現し、逆立ち舞や太鼓の曲打ちは神の躍動、穀種の「神添」といわれる。

11、沖逢(おきえ)
 水神を祀る火伏せ神楽。額に宝冠を付け、白衣白袴で舞う。死に装束とも思われる舞姿は生まれ清まるとの意味合いがあるといわれる。

12、弓正護(ゆみしょうご)
 弓矢の威力で悪魔を祓い、七徳五福を授ける舞。終わると村の護符、神物として、宝渡しの儀式が行われる。

13、本花(ほんばな)
 穀霊を講じる拝舞。袖花の神降ろしから、本花では曲舞で躍動する神として展開する。膳に榊葉と米を入れ収穫を祝う。

14、岩潜り(いわくぐり)
 剣の舞。「岩潜り」は岩間を潜る激流を意味する語義といわれ、四人舞・三人舞・二人舞・一人舞と舞いの流れが変わり、太刀による「潜りの手」と一人舞の八方返り曲舞を特徴としている。

15、御神体(ごしんたい)
 酒こし、国産みの舞で、目覚まし神楽ともいわれる。伊邪那岐・伊邪那美神が、仲良く新穀で酒を醸し、飲むほどに酔うほどに男女和合を表現する舞で、五穀豊穣、子授安産、夫婦円満の祈願が込められている。

16、袖花(そでばな)
 穀種神を招き降ろす舞。採物の榊葉は浄めとしての神の依代で、袖花唱教では五万の龍王を称え、豊穣の祈願と四季の花、水徳への期待が唱われる。

17、七責神(しちきじん)
 出雲神話の主神・大国主神が、御子七神を招きだす舞、教示鍛える舞といわれる。親神が大杖を持って舞い、子神を順次招き出す。子神は若い舞人が割り当てられるが、近年は子神を観客の神楽体験とする集落が増えている。

18、五穀(ごこく)
 五穀を大地に蒔く神楽で、その年の収穫の感謝と来る年の春を予祝し、豊作を祈る願神楽。
「稲・麦・豆・大豆・小豆」、「稲・麦・粟・稗(または黍)・豆」が五穀といわれる。

19、武智(ぶち)
 武智は、鞭(杖)を採物として振りまわしながら舞う「武智の手」が入る。杖は耕作棒とも考えられ、女性の帯を禅に用いることから山神、水神の威徳をあらわす神楽といわれる。

20、山森(やまもり)
山の幸を与える山神と、水を司さどる龍神の舞で、豊狩と豊穣の祈願が込められている。山神が二頭の鹿猪を引き連れて現れ、鹿猪(しし)は観客の頭を噛み、山神の使いとして里の家々を廻る。

21、大神(だいじん)
 麻の神徳、呪力による祓除(ふっじょ)招福の神楽。太鼓も神楽歌もゆったりした調子で、静かに祈願する師匠神楽。

22、地割(ぢわり)
 土地の神である山神が、耕地の割り替えを行う神楽で、竃祭の神楽としても奉納される。始めに竃場である台所で神事が行われ、舞の後に荒神・神主の問答がある。

23、柴引き(しばひき)
 夜明けとともに、いよいよ岩戸神楽が舞われる。岩戸5番といわれるが、舞は六番で構成されている。布刀玉命が天香具山から榊を引き来り、天岩屋戸の前に飾る序曲舞。

24、伊勢(いせ)
 岩戸開き祓いの神事舞で、岩戸五番では唯一素面で舞われる。

25、手力雄(たぢからお)
 天手力男神が岩戸幣と鈴を持ち、天岩屋戸の何処に大神がお隠れになっているかを探る舞。

26、鈿女(うずめ)
 記紀神話では、天鈿女命は八百万神々の笑いを誘うため、桶の上で、衣もかなぐり捨て、調子面白く踊られたと記されているが、高千穂の夜神楽では、細女の舞は静かに舞われる。

27、戸取り(ととり)
 手力男神が力の限り天岩屋戸を取り払う舞。岩戸を開くと神前中央に天照大神が祀られている筥宮が現れ、拝して終わる。

28、舞開き(まいびらき)
 岩戸5番のフィナーレで、天手力男神が大神の手をとり、再びこの世にお迎えになる喜びの舞。宮司が神前中央の天照大神が祀られている筥宮の前で祝詞を奏上し、舞の途中で日月を象徴する御鏡を渡す。舞い終わると御鏡を宮司に渡し、宮司が筥宮に納めて終わる。

29、日の前(ひのまえ) 
 天照大神が再びこの世に出現された祝福の舞(日の出を祝う舞)。外注連の象徴としての大幣を祀る神楽。

39、御柴(おんしば)
 天孫瓊々杵尊と天村雲命の命付けもある。
荒神二神が柴輿に馬乗りし、村人に担がれて外注連を三廻りする。神庭に舞い込み、舞が終わると神主との問答がある。

31、注連口(しめぐち)
 神送りの舞。一年に一度、三十三番の神楽に込めた神遊びも、注連を祀る神楽で終わる。始めに「繰下ろし」の四人舞、
次に入鬼神が宮司から日月の鏡をいただき、「杉登」の登四方舞上げを行い、日月を納めて終わる。

32、繰下ろし(くりおろし) 
 注連口で四隅に座していた四人の舞人が、内注連と外注連を結ぶ道綱「みどりの糸」を解き、四筋をそれぞれ左手に取って舞う。
近年は氏子や観客も参加が許され、ともに道綱を握り、賑やかに神送りが行われる。

33、雲降ろし(くもおろし)
 三十三番のフィナーレ。高天原を象徴する天蓋「雲」を降ろす舞。雲綱を引きながら舞う。
雲布に納められた切り紙が、紙吹雪(水種)として神庭に舞い散る。
舞が終わると神前に二礼二拍手一拝を行い願成就となる。


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